小松本 結

1993年三重県に生まれる。京都芸術大学大学院(旧京都造形芸術大学大学院)美術工芸領域油画(版画)専攻修了。
SNSの普及により、他者の容姿や生活が日常的に可視化される現代社会においては、自他の境界が曖昧になり、自身の価値やイメージまでもが他者の視線や評価に左右されがちである。そうした時代の中で、小松本は心の奥底に潜む不安や葛藤を描くことを試みる。
画中の層状の模様は、「垂らし込み」と呼ばれる油彩とアクリル絵の具の技法によって生み出されており、アメリカ・デトロイトの自動車工場で偶然誕生した人工鉱石「デトロイトアゲート」をモチーフとしている。瑪瑙にも似たその模様は、小松本自身の内面に幾重にも積み重なっている「感情の層」を象徴している。
こうして感情の揺らぎを繊細に描きながら、小松本の世界は日々移ろう感情に翻弄されながらも、自らの姿勢を整え、「今日」を生き抜く人々の静かながらも力強い意思を見るものに伝えている。